特許権のライフサイクル
特許権の誕生から消滅するまでについてのライフサイクルについて説明します。
まず、特許権で保護されるものは何か、を考えて見ます。
特許権の保護対象は、「発明」です。
「発明」というのは、特許法で定義されており、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定められております。
そして、特許権は、この発明が誰のものであるかを定めるものであり、原則的には特許権の所有者のみがその発明の実施ができるための権利です。つまり、発明という知的財産を保護するための権利が特許権というわけです。
でも特許権を誕生させるためには、まず、特許出願という手続きを特許庁にしなければなりません。
特許出願前
特許出願をするためには、発明を文章に書き表したものを願書に添付して特許庁に出願する必要があります。
ただし、出願すれば権利化してくれるかというとそうではなく、その発明が特許権を付与するのにふさわしい発明かどうか特許庁に審査をしてもらう必要があります。
特許庁では、審査官が特許・実用審査基準に基づいて審査します。
ここで、特許権となるためには、その発明が、
- 産業上で利用できること(産業上利用性)
- 新しいこと(新規性)
- 容易に発明できたものでないこと(進歩性)
- 公開された先の出願の出願書類に記載された発明と同一でないこと(拡大先願)
- 公序良俗を害するおそれがないこと
という要件を満たす必要があります。
また、
- 2つ以上の発明を1つの願書で出願する場合、各発明が一定の関係を満たすこと(発明の単一性)を満たすこと
- 出願のための明細書が所定の記載要件を満たしていること
という要件を満たす必要があります。
これらの要件を満たした特許明細書を作成して願書に添付して特許出願します。この際、その発明に対して一番最初に出願しなければ、その出願人は特許権者にはなれません。なので、急いで出願する必要があります。
ここで、出願に際して必要な書類は、
- 「願書」(特許出願の「特許願」の作成要領)
- 「特許請求の範囲」(特許出願の「特許請求の範囲」の作成要領)
- 「明細書」(特許出願の「明細書」の作成要領)
- 「図面」(特許出願の「図面」の作成要領)
- 「要約書」(特許出願の「要約書」の作成要領)
となります。
これらをそれぞれ所定の様式(特許出願の様式は?)に従って準備して、出願します。
特許出願後〜特許権の誕生
出願したところで、次に審査請求を特許庁に対して行います(出願と同時でもよい。)。
審査してください、という要求を出さない場合には、出願から3年経過した時点でその出願が取り下げられたものとなってしまいます。
審査の中で、先に記載した様々な要件について、基準を満たしているかそうでないかが審査されます。そして、すべてクリアしたと判断された場合には、特許にしてもいいですよ、という査定がなされます。
一方、これらのうち、一つでも疑わしい点があれば、特許にはなりません。その場合には、特許にならないとする理由書が特許庁から送付されます。
このとき、特許庁の判断に不服がある場合、又は不服はないけれども何とかして特許にしたい場合には、特許庁に意見したり、発明の内容を少し見直した書面を提出したりします。ここで再度審査が行われ、要件が満たされれば特許査定となります。
この段階でもやっぱり要件を満たさないとなったら、特許にできませんという査定が下されます。これに不服の場合には、さらに審判、訴訟に進みます。
何れの場合でも、最終的に特許査定(審決)がなされ、最後に特許料を支払ったところで特許権の登録がなされて、ここに晴れて特許権が誕生します。
特許権の誕生後〜消滅
特許権というのは、産業政策上認められた権利なので、出願から20年経過した時点で消滅してしまう、期限付きの権利です。
そして、消滅するまでの間、土地等の不動産における固定資産税のように、特許権を維持するための特許料を特許庁に支払い続ける必要があります。この特許料は、特許権そのものの価値とは関係なく、存続期間に応じて決められています。
なので、維持費用に比べて特許権が生み出す価値が低い、というのであれば、無理して維持する必要はないでしょう。
こうして、維持するためのお金を支払わない場合には、特許権が途中で消滅します。
他にも消滅要因がいくつかあります。
その一つが、無効審判という制度によって、消滅どころか、初めからなかったものとさせられてしまう場合です。
例えば、特許権の価値が高いほど、競合にとっては邪魔な存在となるので権利をつぶしたいと思います。このような場合に、その発明が先に記載した登録要件を満たしていない、とする無効審判が証拠とともに請求されます。
特許権は審査官によって審査されて成立する権利なのですが、審査官の調査にも限界がありますので、先ほどの要件を完全には満たしていないものでも特許になってしまう場合もあります。もし、その特許権がそういうものであったならば、審判によってつぶされてしまいます。
こうして特許権の生涯が終わります。
ただし、特許権が消滅しても、その力が発揮される場合があります。
特許権がまだ生きていたときに第三者がその特許権を侵害していた、として損害賠償請求された場合です。この場合、特許権が消滅した後でも訴訟を提起することができますので、死してなお、、、という状態になります。